(06)2021年、駅前広場と大規模再開発を結びつける仕組みがつくられた


【このブログでわかること】2021年(令和3年)の都市計画変更が、なぜ「駅前広場」と「大規模再開発」を結びつける仕組みだったのか

前回(05)では、都市計画法が定める住民参加の手続きが、実質的な同意を意味しないことを説明しました。(多くの人は知らない)今回は、その手続きを経て2021年(令和3年)に実際に何が変更されたのかを、駅前広場との関係から見ていきます。

まず結論から言うと── 2021年(令和3年)に世田谷区が行った都市計画変更は、単なる用途地域の整理ではありません。

それまで別々に進められてきた「駅前広場の公共事業」と「地権者による再開発」を一つに結びつけ、大規模な建物を可能にする条件を整えた転換点でした。

用途地域と高度地区が変わった

2021年(令和3年)、世田谷区は「千歳烏山駅周辺地区地区計画」を新たに都市計画決定しました。同時に、用途地域、高度地区、防火地域、日影規制なども変更されました(世田谷区「千歳烏山駅周辺地区の街づくり」)。

このとき行われたのは、単なる地域区分の整理ではありません。まず、再開発予定区域内の近隣商業地域と第一種住居地域を商業地域へ変更し、指定容積率を原則500%に引き上げました(世田谷区「関連都市計画等の変更の概要」)。

さらに、この区域を商業地区B1・B2・B3に分け、「敷地の統合」と「高度利用」を促進する方針を地区計画に定めました(世田谷区「千歳烏山駅周辺地区地区計画・原案説明会資料」)。

敷地をまとめれば、45m制限が外れる

敷地面積が2,000㎡未満の場合、容積率はB2で300%、B3で200%に制限され、B3には45mの高さ制限が残されました。しかし、土地をまとめて2,000㎡以上の敷地にすれば、容積率500%を利用でき、B3の45m制限も外れる仕組みでした(世田谷区「千歳烏山駅周辺地区地区計画」)。

これは、将来の一体的な大規模開発を可能にする制度設計でした。

見落とせない、駅前広場との関係

駅前広場(世田谷区画街路第14号線)は、2012年(平成24年)に都市計画決定され、2014年(平成26年)に事業認可を受けました。本来は再開発とは別の公共事業として、区が土地を買収して整備する計画でした(世田谷区「都市計画道路補助第216号線・千歳烏山駅前広場」)。

その後、2015年(平成27年)に地権者による街づくり勉強会が始まりました。当初の検討区域には、駅前広場は含まれていませんでした。準備組合の資料にも、当初は駅前広場を再開発の検討区域に含めていなかったが、その後、駅前広場と再開発を一体で整備することを区へ提案したと記載されています(準備組合「再開発事業を活用したまちづくりの基本的な考え方」)。

この「その後」の転機は、2020年(令和2年)11月から12月にかけての出来事でした。区は2020年(令和2年)11月の説明会で、翌年策定予定の地区計画の内容として、商業地区B2・B3で敷地2,000㎡以上なら高さ制限を適用除外とする方針を、すでに示していました。

その1か月後、2020年(令和2年)12月になって、地権者らは「南側地区まちづくり準備会」を設立し、この準備会が初めて駅前広場を含めた再開発の検討を始めています。買収の行き詰まりとは関係なく、区が先に高さ制限撤廃の方針を示し、その後に駅前広場が検討区域へ含まれた、という順序です。

こうした検討が進んでいた中で、2021年(令和3年)の都市計画決定が行われました。駅前広場の区域と重なる土地は商業地区B1に位置付けられ、B1・B2・B3全体で敷地統合と高度利用を促進する方針が定められました。

この結果、駅前広場について二つの方向が同時に残されました。

  • 区が公共事業として土地を買収する(代替地交換含む)
  • 買収対象の地権者が再開発に参加し、土地の権利を新しい建物の床などに変える

区は駅前広場の単独買収を中止しないまま、同じ土地を再開発へ取り込める都市計画も整えたのです(これでは買収担当職員のやる気が削がれるのは必定!実際、買収実績は伸び悩みます)。

区は、駅前広場を再開発区域に含めた理由について、地権者の生活再建だと説明しています。保坂区長は2026年(令和8年)6月10日の本会議で「駅前広場等の用地提供者の生活再建も含めて千歳烏山駅周辺を主要な地域生活拠点として発展させていく」と答弁し、2026年(令和8年)6月11日の再質問への答弁でも「地権者の皆様の生活再建は重要な課題である」と繰り返しています(世田谷区議会会議録検索システム、令和8年第二回定例会 6月10日・11日)。

ただし、この「生活再建」のための仕組みは、建物の高さにも直接関わっています。世田谷区が2025年(令和7年)6月14日・19日の説明会で示した資料によれば、区域全体の約3分の1が駅前広場になるため、残りの約3分の2だけを「敷地」として建物の機能を集約せざるを得ない、とされています。そのうえで、地権者の生活再建に必要な床面積をその狭くなった敷地に収めるため、基準の容積率500%に200%を上乗せした700%を維持する必要がある、と説明されています。この200%の上乗せは、広場や歩道状空地の確保といった地域貢献を条件とする都市開発諸制度(高度利用地区)を活用したものです。

つまり、駅前広場を再開発区域に含めたことで、建物を建てられる土地そのものが狭くなり、そのしわ寄せを高い容積率と高さで埋め合わせる、という構図になっているのです。地権者の生活再建のための決定が、結果として建物を高層化させる一因にもなっている、と言えます。

説明されなかった「規模」と「高さ」の変化

駅前広場の土地を再開発区域に取り込めば、当然、事業費が膨らみます。駅前広場を再開発に取り込むことは、再開発を大規模化・高層化する方向へ押し出す可能性を持っています。

つまり2021年(令和3年)の都市計画決定は、それまで別々だった駅前広場の公共事業と、地権者による再開発を結びつけ、大規模な建物を可能にする条件を整えた転換点だったのです。

この時点でタワーマンションを予測した区民はいないと思います。予測できたのは地権者と区だけでしょう。土地を統合すれば容積率500%を利用でき、B3の45m制限も外れる仕組みがつくられたといっても、元は45mだったものが、その3倍以上の140mまでとなるようなことは、容積率500%を使っても千歳烏山商店街の風景からは想像できた区民はいなかったでしょう。

継ぎ足しの計画に見える理由

そもそも、駅前広場は区が土地を買収して整備する公共事業として始まりました。しかし、2025年度末(令和7年度末)の用地取得実績が約3割にとどまるなか、途中から駅前広場を民間の再開発事業に組み込んで整備する方向へ転換しています。

そのため、初めから一貫した全体計画があったというより、事業の進行に合わせて別々の計画を継ぎ足した、つぎはぎの計画に見えます。一体、千歳烏山はどういう街になるのでしょうか。

その答えを考えるには、この再開発を実際に進めているのが誰なのかを知る必要があります。次回は、この計画を主導する事業者に焦点を当てて見ていきます。


コメント

コメントを投稿

このブログの人気の投稿

(01)そもそもの発端は駅前広場

(02)世田谷区がどこを、どれだけ(代替地と交換もあり)買わなければならないか

(04)規制緩和の流れを作ちゃった保坂区長