(09)区議会は何を問いただしたのか

 

区議会は何を問いただしたのか──「一旦立ち止まるべきだ」という声

前回(08)では、下北沢駅周辺地区の高さ制限の実例を通じて、千歳烏山との違いを見てきました。今回は、この計画が区議会でどのように取り上げられてきたかを、2026年(令和8年)6月10日・11日の本会議のやり取りから見ていきます。

【このブログでわかること】

  • 2026年(令和8年)6月の本会議で、複数の会派から「巨大な再開発を進めるべきではない」という趣旨の質問が出されたこと
  • 2026年(令和8年)4月10日の都市計画審議会で、200通を超える住民意見が十分に検討されていないとして、都市計画決定に向けた諮問の時期が8月から11月へ延期されたこと
  • 国の補助金が減額された場合、誰がその不足分を負担するのかという問いに、区の答弁が具体的な確約を避けていること
  • 全国的に大規模再開発の見直し・凍結が相次いでいるという報道・データが示されても、区長の答弁は一般論にとどまっていること

まず結論から言うと──2026年(令和8年)6月の区議会本会議では、複数の会派からこの計画に対する懸念が相次いで示されました。しかし区長の答弁はいずれも「検討してまいります」「働きかけを行ってまいります」という言葉にとどまり、区民が求めている具体的な確約――いつ、どの段階で、リスクの全体像を示すのか――は、この本会議の中では示されませんでした。

「巨大な再開発を進めるべきではない」という指摘

2026年(令和8年)6月10日の本会議代表質問では、次のような質問がありました。

「千歳烏山駅前では、大規模再開発計画が進められています。……容積率700%、高さ140メートルの巨大再開発を進めるべきではないと考えます。再開発によるまちづくりは一旦立ち止まり、改めて地権者や地域住民の参加と協働によって……住み続けられ、商売を続けられる生活再建型のまちづくりを求めるものです」

この質問では、「参加と協働のまちづくり」を掲げながら実際には地区計画への反映がされていないのではないか、という点も問われています。これに対し保坂区長は、街づくり情報交換会を3回開催してきたことや、2026年(令和8年)5月の第3回情報交換会で再開発準備組合側から「地域住民の意見を丁寧に聞き、できるだけ生かしていきたい」との考え方が示されたと聞いている、と答弁しました。あわせて、2026年(令和8年)4月の都市計画審議会で「より丁寧な議論を求める御意見」が示されたことを踏まえ、都市計画手続のスケジュールを見直すこととした、とも述べています。

質問した側は、この答弁を受けてなお、「地権者のリスクは、やはり高まっていると思います。千歳烏山駅前再開発は一旦立ち止まることを改めて述べまして」と締めくくっています。

国の補助金が減額されたら、誰が負担するのか

同じ質問では、建設費高騰によって全国で再開発事業の見直し・延期が相次いでいることを踏まえ、国の再開発補助金や公共施設管理者負担金が減額された場合に区や地権者の負担が増える可能性についても問われました。質問者は、江戸川区議会での答弁例(公共施設管理者負担金は国の減額分を区が補塡する一方、再開発補助金は国の減額に区も追随して減額する、という説明)を引き合いに出し、世田谷区でも同じ解釈でよいか確認を求めています。

これに対し区の担当部長は、次のように答弁しました。

「国の再開発補助金の交付額が当初見込みを下回った場合には、区のまちづくりの方針を踏まえ、事業の必要性、公益性、優先度などを総合的に判断し、補助制度の範囲内において区としての対応を検討してまいります」

「総合的に判断」「範囲内において検討」という表現にとどまり、江戸川区のように「区が不足分を補塡する」「区の補助金も同様に減額する」といった明確な基準を示したものではありません。再質問でも重ねて確認が求められましたが、答弁は同じ表現の繰り返しにとどまりました。建設費が今後さらに高騰した場合、その負担が最終的に誰に及ぶのかという、地権者にとって最も切実な問いに、区は明確な基準を示さないままです。

200通を超える意見と、審議会の判断

2026年(令和8年)6月11日の別の会派からの質問では、次のような事実が紹介されています。

「区は、4月10日の都市計画審議会にて、諮問の時期を8月から11月へと後ろ倒ししました。200通を超える住民意見が、まだ十分に検討されていない、その状況での採決は本意でないという会長の御判断でした」

200通を超える住民意見が集まりながら、当初の予定どおりに手続きを進めることに審議会の会長自身が慎重な判断を示した、という事実です。この質問では、都市計画決定という重大な行政行為の後になって初めて事業費や工期などの具体的な数字が示されるのであれば、区民が実質的な判断をできるのは「取り返しのつかない段階に入ってから」になりかねない、と指摘し、事業費の膨張・工期の延長・地域商店街への影響・地価が上がって、昔からの住民や商店がこの街に住めなくなるのリスクを、11月の都市計画決定を前に区民に開かれた形で示すと約束できるか、区長に直接尋ねています。

これに対する保坂区長の答弁は、「今後の事業計画の策定段階において……事業費等の見通しについて、諸条件を踏まえながらさらに示されていくものと認識しております」「できる限り事業の全体像を示していくことは重要だと考え、努力をしたいと考えます」というものでした。「約束できるか」という直接の問いに対し、区長は明確な確約を避け、「努力したい」という言葉に置き換えています。

「一等地でも進まない再開発」──全国的な流れとの整合性

2026年(令和8年)6月11日の再質問では、放送3日前にあたる同年6月8日にNHK「クローズアップ現代」で放送された特集が取り上げられました。全国の駅周辺の再開発事業を対象にしたアンケートで、回答があった109件のうち7割にあたる77件で計画の見直し・中断・中止があったという内容です。原因として資材費・人件費の高騰が挙げられ、番組内では専門家が「床面積を増やすことで採算を取るという従来の概念から脱却する必要がある」と指摘したことも紹介されました。この上で、資材高騰・人件費高騰・地価上昇のリスクを区は現在どう認識しているか、区長に問われています。

保坂区長の答弁は、「近年の物価高騰や建設コストの上昇、地価高騰など、社会経済情勢の変化も踏まえ、事業の実現性や継続性に留意しながら検討が進められている」「トータルなコストを最新の値で把握していくことは大変重要だと考えております」というものでした。全国的に7割の再開発事業が見直しを迫られているという具体的なデータが示された後も、区長の答弁は「留意する」「重要だと考える」という一般的な言葉にとどまり、千歳烏山の計画そのものについて、こうしたリスクを踏まえた再検証を行うといった具体的な言及はありませんでした。

区長の答弁に共通する姿勢

この本会議でのやり取りを通して見えてくるのは、「巨大すぎるのではないか」「リスクを事前に示してほしい」「国の補助金が減額されたら区はどう対応するのか」という、いずれも具体的な回答を求める質問に対し、区長・区の答弁が「検討してまいります」「努力したい」「総合的に判断する」という言葉で締めくくられるパターンです。地元の議員として、こうした答弁の繰り返しが、区民の間に「結局は既定路線どおりに進むのではないか」という不信感を生んでいるのではないかと感じています。

一方で、200通を超える住民意見を理由に都市計画審議会が諮問の時期を後ろ倒しにしたことは、区の手続きの中でも数少ない、区民の声が実際に手続きに影響を与えた場面だったといえます。この判断がどこまで計画内容そのものの見直しにつながるのか。

【参考】


▼次回は、この計画をめぐって区民から出された陳情・意見と、その後の動きを見ていきます。






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